UTMF サポート記(4)

2014/05/06


 

前回(3)からの続きです。

 

いよいよレースも終盤。

選手たちが最難関の天子山塊に挑んでいる間に僕たちは「A9 麓」(123.3km地点)へ。

スタートから既に12時間が経過し、サポートする側にも眠気と疲労の色が見え始めます。

車でエイドを回っているだけの僕らですらそんな状態なのに、ここまで既に120kmを走ったうえ最も険しいセクションを通過している選手達はどんな状況なのか・・・。

想像するだけでグッタリしそうです・・・(笑)

 

大会の公式タイムテーブルでは「A8 西富士中学校」から、ここ「A9 麓」までの所要時間は2時間。

しかし、予定時刻のAM3時を過ぎてもなかなか選手が到着しません。

どのチームのサポートクルーもストーブを囲み震えながら、選手の到着を待ちます。

 

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トップを走るフランソワ・デンヌ選手が到着したのは、空も白み始めたAM4時30分。

「A8 西富士中学校」を出発してから3時間を要しました。

 

しかし、この3時間という所要時間が驚異的な速さだった事を、この時僕らはまだ知りません。

 

1人到着したならば、後は次々と到着するものだと思いきや、2位の選手がなかなか到着しない。

結局、2位のライアン・サンデス選手が到着したのは、50分後のAM5時20分でした。

前半の目まぐるしく時間に追われる状況だけでなく、寒さと極度の眠気に耐えながら、じっと選手の到着を待つ事もサポートの大変さである事を実感しました。

 

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トップ到着から1時間30分後、アントワーヌが「A9 麓」に到着。

いつもと変わらず、淡々と補給をするアントワーヌですが、実際は相当疲れている筈です。

「Allez! Antoine!!」

再び出発する彼を、奥さんのアンさんとHOKAサポートチームの皆で送り出します!

 

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アントワーヌから10分遅れで到着したのはリオネル!

彼もアントワーヌと同じく表情は大きく変わりありませんが、流石に疲れている様子。

5分程ゆっくりと補給をしてから、アントワーヌを追って出発!

「Allez! Lionel!!」

再び皆でリオネルを励まし、送り出します!

 

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リオネルから20分遅れて到着したデイブ。

結局デイブは「A8 西富士中学校」を出発してから「A9 麓」まで、4時間30分を要しました。

「A8 西富士中学校」通過時に4位だった順位も、このセクションで4人に抜かれ8位。

 

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椅子に座りこみ、かなり疲れ切った様子のデイブ。

この天子山塊セクションは、彼が今まで走ってきたどんなレースよりキツかったそうです・・・。

 

それはその後に到着したジョーも同じ。

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山から下りてきたジョーは、レース中、こんな眠気に襲われたのは初めてと言っていました。

とにかくキツかったとも・・・。

 

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そして原さん。

「A8西富士中学校」から食べ物を受け付けなくなってしまった事で、エネルギーと気力が底をつき、ここでリタイア。

昨年の優勝以降、プレッシャーや自分自身への高い要求もあったりして、今回は思い通りのレースをする事が出来なかったように思います。

今年一年はUTWT(Ultra Trail World Tour)のレースを中心に走られるとの事ですので、是非ともまた原さんらしい走りを見せて欲しいと思います。

お疲れ様でした!

 

そしてクリストフ。

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トップが到着してから3時間後に「A9 麓」に到着。

何とか迷う事なく山から下りて来てくれました!

彼もかなり疲れた様子でしたが、今年に入ってレースだけで3,000km(笑)を走っている男は流石にタフです!

食べる物を選り好むようになりましたが、先へ進む事に対しては全く迷いがありません。

「Allez!! christophe!!」

左足が少し痛そうに走って行く彼を見送り、僕らは最後のサポートエイド「A10 本栖湖」(138.6km)へ向かいます。

 

麓のエイドを出ると、既に陽が昇り暖かくなってきていました。

本栖湖沿いの道を「A10 本栖湖」へ向かっていると、前方に道路脇を走るアントワーヌの姿が。

窓を開けて「Allez! Antoine!」と呼びかけると、彼はニコっと笑って手を振ってくれました。

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彼はこの厳しいレースを心から楽しんでいました!

これだけ苦しい時にも笑顔でいられる事に、アントワーヌの強さを垣間見た気がします。

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最後のサポートエイドでも、いつもどおりに補給を済ませて、アントワーヌは出発していきました。

 

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続いて到着したのはリオネル。

ハナエちゃんもパパが到着して大興奮(笑)

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餅が大好きなリオネルは、ここでもしっかりと大福を補給していました(笑)

彼もレース中、常にエネルギーに満ちた表情をしており、消防士さんらしく実に頼もしい選手でした!

やっぱりウルトラのレースに最も大切なのは精神力ですね。

 

続いて到着したのは、デイブではなくクリストフでした!

「A9 麓」を出発した時には痛そうだった左足も問題無いようで、さっきよりも元気そうな表情!

レースサポート最後の仕事として、次の「A11 鳴沢」(157.6km)までの距離と高低図を説明し、そこからゴールまでの残り距離も伝えました。

ほんの19時間前には全く勝手が分からず焦っていたエイドでのサポートも、最後には余裕を持って行う事が出来ました。(もしくは眠気と疲労で頭がボーっとしていただけか・・・笑)

後はゴールに帰ってくるクリストフを出迎えたら、レースサポートの仕事も終了。

とは言え、ゴールまで残り30kmもありますが(笑)

無事にゴールしてくれる事を願ってクリストフを送り出します!

「Allez!! christophe!!」

 

鉄郎君がサポートしているジョーを含め、デイブ以外のサポート選手達はゴールに向かって出発していきました。

ゴールで出迎えるまでの時間はまだタップリあるので、皆でデイブの到着を待ちます。

クリストフが出発して30分後、湖畔を歩くデイブの姿が遠くから見えました。

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健介さんがデイブを迎えに行き、歩きながら様子を聞きます。

まずはエイドでゆっくりと休息を取り、続行可能かどうか判断する事に。

ただ、その表情には全く覇気が無く、疲弊しきった様子のデイブからはリタイアの可能性を強く感じました。

 

エイドに入ると、他チームのサポートクルーやエイドスタッフの全員から大きな拍手で出迎えられたデイブは、少し申し訳なさそうな表情に見えました。

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足が完全に終わってしまい、屈むのも辛そうな様子で椅子に座ると、大きく息をついたデイブは次のエイドまでの距離を聞き、首を横に振りました。

何か食べるかと聞いても、「いらない」と言って首を振るデイブ。

周りにいた誰もが、何と声を掛けていいのか分からずにいると、ジョーのサポートを終えて一緒にデイブの到着を待っていた鉄郎君が、その雰囲気を察して口を開きます。

 

「デイブ、時間は十分にあるから、何か食べてゆっくり休めばいいんだよ!」「君なら絶対にゴール出来る」

するとデイブが鉄郎君に対してこう言いました。

「鉄郎、君が来年(UTMFを)走るって約束するなら、僕は歩いてでもゴールするよ」

「オーケー!約束する!!」 と鉄郎君。

それを聞くとデイブはスッと立ち上がり、休もうともせず直ぐに出発していきました!

そんなデイブを皆で励まし、拍手で送り出しました!

 

今思えば、きっと気持ちが昂っている間に行きたかったんだと思います。

もうそれくらい精魂尽き果てた状態だったんだと思います。

それでも自分を奮い立たせて出発していくデイブを見て、ウルトラトレイルのレースは、走力や体力以上にメンタルが重要なスポーツだと改めて強く思いました。

 

それと流石にアメリカのレースを数多く走り、様々な経験をしてきた鉄郎君。

リタイアを考えている選手の励まし方、扱い方はお手の物です!

皆が良い勉強させて貰いました!

ありがとう鉄郎君!

自分を含め、このやりとりを見守っていた全員が感動の涙を必死に堪えていたと思います・・・多分(笑)

 

エイドでのサポートが全て終了し、一同ゴールへと向かいます!

 

僕たちが到着したちょうどその時、フランソワ・デンヌ選手がトップでゴールしてきました!

優勝タイムは19時間9分!

総距離169km、累積標高9,478mにも及ぶこの過酷なレースで、このタイムは驚愕です・・・。

 

そしてHOKA ONE ONEチームで最初に帰ってきたのは・・・!

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アントワーヌ・ギィヨン!21時間29分で第4位!

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照れ臭そうにインタビューを受けるアントワーヌ(笑)

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ゴール後は、彼をサポートした奥さんのアンさんと一緒に笑顔で記念撮影。

 

今回、レース中に直接的なサポートをした訳ではありませんが、間近でアントワーヌという選手を見ていて、心底彼のファンになりました!

UTMBをはじめ、UTWTのレースを中心に活動する彼を、今後も応援していきたいと思います!

 

アントワーヌに続きゴールしたのは・・・!

リオネル・トリベル!21時間32分で第5位!

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出迎える奥さんの元へハナエちゃんと一緒にゴールしたリオネルは、戦うレーサーの顔から再びお父さんの顔に。

いつもフレンドリーで優しいリオネル!

彼にもまた日本のレースを走って欲しいです!

 

そして僕がサポートさせてもらったクリストフはジョーと一緒にゴール!

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クリストフ・ルソー!23時間41分で第14位!

何だかんだ言ってもやっぱり凄い!

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ゴール後は、何事も無かったかのようにチームメートのアントワーヌと早速談笑。

 

今回、彼のサポートをさせてもらって思ったのは、心から走るのを楽しんでいる、と言う事。

辛いのや痛いのも全て受け入れて飄々とレースを走る彼にとっては、優勝する事やゴールする事だけが目的ではなく、楽しむ事が一番なんだろうと思えます。

彼のサポートをさせてもらう事が出来て、本当に光栄でした!

普段の山遊びはもちろん、レース中に辛い時も、楽しむ気持ちを忘れずにいたいと思います!

 

あとはデイブの到着を待つだけになりました。

大会公式のランナーズアップデートを確認すると、クリストフがゴールする少し前にデイブは「A11 鳴沢」(157.6km地点)を通過した様子。

歩いている為に時間はかかっていますが、確実にゴールへ近づいていました!

それを見て、いてもたってもいられなくなり、デイブをサポートしてきた植田さん、内山さん、鉄郎君と大島さん達と一緒に、ゴール地点からデイブを迎えに行く事に!

恐らくあと1時間半くらいでゴールへ到着するはず。

歩いているだろうデイブの到着時間に合わせ、ゴール地点から歩いて逆方向へ向かいます!

ほぼ寝ていないので疲れていたとは思いますが、ここまで走って来た選手達の事を考えていたらそんな疲れは全く感じず、逆に無性に走りたくて仕方ない不思議な感情でした(笑)

 

桜が舞うの河口湖沿いを進んで行くと、前方にデイブの姿が見えました。

デイブは最後の力を振り絞り、懸命に走っていました!

ゆっくり歩いているもんだと思っていたので、デイブをゴールで迎える為に、急いでゴールに向かって先回り!(笑)

 

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デイブ・マッキ―!25時間26分でゴール!

 

入賞の可能性が無くなった状況でも、トップランナーの意地で約束どおりゴールしたデイブ!

その男気に感動して今度ばかりは本当に涙が出そうでした!

トップレベルの選手なのに、まるで友達が完走したような気持ちになりました。

デイブ!完走してくれてありがとう!

そして鉄郎君、来年のUTMF頑張って!!(笑)

 

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ゴールゲートで他の誰よりも長い時間、デイブと話し込む鏑木さん。

ゴールしても良い結果が出せないと分かるとリタイアするトップ選手もいると聞きますので、デイブのように世界で活躍する選手が、自分のプロデュースしたレースを必死に完走してくれるのは嬉しいでしょうね!

 

その後も続々とゴールしてくる選手達を見ながら、当然いつか自分も走ってみたい気持ちは強くなりました。

それと同時に、強い気持ちが無いと此処には辿り着けない事も今まで以上に強く感じました。

大会の規模だけでUTMFが素晴らしいレースという訳ではありません。

でも間違いなく国内で最も過酷なトレイルランニングレースであるUTMFを完走する事は大きな自信となり、それを真剣に目指す事自体が大きなモチベーションになると思います!

これからUTMFを目指す方!既に完走されている方も、チャレンジし続けましょうね!

 

ちなみにこの日は宿に戻って風呂に入った途端、強烈な睡魔に襲われ、選手達によるお疲れ様パーティーに参加する事無く、早々と寝落ちした事は言うまでもありません・・・。

 

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そんな訳で翌朝は日の出前に目が覚めてしまったので、河口湖畔をランニング。

滞在していた5日間で最も綺麗な富士山を見る事が出来ました!

 

その後、午前中はデイブを乗せて富士山5合目までドライブ。

五合目手前の展望台から地獄の天子山塊を振り返るデイブ(笑)

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午後からは閉会式へ。

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入賞した選手達は、みんな晴れやかな表情です!

 

そしてこの閉会式会場で、デイブをはじめ5日間を共にした選手達ともお別れ。

彼らにとっても、今回のUTMFが思い出に残るレースとなってくれれば嬉しいです!

再会を楽しみにして、自分も頑張りたいと思います!

 

今こうして振り返ってみても、あっと言う間に過ぎてしまった濃密な5日間でした。

ランナーとして自分が彼らと同じレベルに辿り着く事はありませんが、世界のトップで戦う彼らも僕らと同じ人間として同じ様に苦しみ、諦めかけ、逃げ出しそうになりながら、それを乗り越える姿を一番近くで見て感じられた事も、自分にとって大きな財産です!

こんな貴重な機会を与えて下さったサンウエストの皆さんをはじめ、このレースを共にした仲間に心から感謝します!

ありがとうございました!

 

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終わり!